077045 ランダム
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Lee-Byung-hun addicted

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ball machines <3>

ball machines 3



「え?ホームエクスチェンジ?」

夕食を食べながら揺はその日あった出来事を彼に話していた。

「うん。観た?『ホリディ』ジュード・ロウの」

「ああ観た。キャメロン・ディアスの『ホリディ』ね」

「ねえ、そんなに私のこと好きなんだ・・他の男の名前聞くのも嫌なほど」

揺が冗談交じりにそういうと

「うん」

彼はサラダをほおばりながら事も無げに頷いた。

「全く・・・もう・・・」

揺は嬉しそうに彼の肘を小突いた。

まんざらでもなさそうな彼が話を進めた。

「で、何で?」

「ああ・・だからね。彰介の会社の子が明日から日本に出張で狭い品川のホテルに泊まるっていうから、
2週間下落合の家を世話することにしたのよ。
その子日本好きだし、賄いつきだし、絶対気に入ると思って。
おばあちゃんたちもそういうの大好きだし。
そしたらね。
じゃあ、揺さん私の家使ってくださいよ。という話になったわけ」

「ふ~ん。場所どこなの?」

「サンタモニカ。海が見えるテラス付き。車付き。一人暮らし・・・男はついてないらしい・・でも男はいるからいらないか・・」

揺はご機嫌で彼の肩を叩いた。

「え?一人暮らしなの・・それ・・いいよね・・」

彼がしまりのない顔でつぶやく。

「嫌だ・・・何考えてるの?もう・・・エッチ」

揺は彼を小突きながら目の前にいるスタッフと目が合った。

「あ・・」

「僕たちはいいんだけど・・もしかして存在忘れてた?」

スタッフは一応にニヤニヤとしている。

揺は照れくさくなり、

「ちょっと・・・トイレ」

そそくさとダイニングを後にした。

そしてトイレに入り一人ニヤつく。

「サンタモニカの海岸・・・・
夕日のテラス・・・
美味しいワイン・・・
シーフード・・・
で。彼がいたらもう何にもいらない。
最高!神様に感謝」

便座に祈りをささげたのだった。






「ルルルルル・・・ルンルン」

パサディナの久遠寺家では、鼻歌交じりにご機嫌で帰ってきた揺をウナとスエがリビングで出迎えた。

「揺ちゃん・・ご機嫌じゃない。なんかいいことでもあった?」

「え?まあね・・あ、ウナさん、長い間お世話になりました。
明日引っ越しま~す」

揺は深々と頭を下げた。

「え?どうするの?」

ウナが驚いたように尋ねる。


・・・・

「あら、いいじゃない。こことあのアパートメントじゃ、彼とラブラブってわけいかないものね~」

揺の説明を聞いたウナはからかうようにそういうと揺をつついた。

「まあね。ま、彼も忙しいからオフの日とかぐらいだけどね・・ふふふ」

揺は照れながら、スエを抱っこして、彼女のおもちゃを手持ち負沙汰にいじっている。

「あれ、この木のおもちゃ・・」

揺が手に取ったビー玉を転がすおもちゃの隅には「Rhoads」の文字が書かれている。

「あ~。それ、誕生祝いにお友達に頂いたんだけど。
まだ、ちょっと早いのよね・・。
ビー玉飲んじゃいそうでドキドキ。
・・え?揺ちゃん知ってるの?
有名なオブジェ作るひとの作品らしいわよ・・
えっと・・・説明書があったと思うけど・・」

ウナはキャビネットの引き出しをゴソゴソと漁って一冊のカタログを差し出した。

「George Rhoadsね・・・いいじゃない」

にっこりと笑ってビー玉を転がす。

彼女はコトコトと転がっていく様子を眺めながら彼の笑顔を思い出していた。








数日後。

揺のサンタモニカ生活は彼女の想像とはちょっと違うものになっていた。

パサディナよりダウンタウンから遠いこともあり、
朝、アパートメントに通うことはなくなり、
その代わり、ランチをdowneyのスタジオに届けることになった。

最初のうちは現場の雰囲気も覗くことができたし、
休憩時間と上手く合えば彼とゆっくり話すこともできたが、
撮影スケジュールが立て込んでくると、彼と顔を合わせることなく、
ランチだけ置いて撮影所を後にする日もしばしば。

夜も撮影が長引いたり、付き合いで出かけることも増え、なかなか会えない日が続いていた。




「さあ・・そろそろ帰るわ」

「もうすぐ終わるだろうから・・あいつ戻ってくるまで待ってたら?」

ランチを届けに来て3時間待っている揺にスタッフは気の毒そうに声をかけた。

「毎日待たせてるって思うと嫌なんじゃないかな?ラブレター書いたから、よろしく伝えてくれます?」

明るくスタッフにそう告げると揺はスタジオを後にした。

「さて。では宝探しに出発」

揺はそうつぶやくと車のアクセルをぎゅっと踏み込んだ。


              




「あれ?揺は?」

「今日は帰るって・・熱烈ラブレター書いたって言ってたよ」

「ふ~~ん。待っていればいいのに」

ビョンホンはランチボックスに添えられた手帳の切れ端をハート型に折りたたんだ手紙をそっとつまんでクスッと笑った。

「全く・・こういうところは凝ってる」


「ビョンホンssi・・待ってたと思った?

私は私でそれなりに楽しんでるから、私のことは気にせずに撮影楽しんで。

今日のメニューは韓国風です。

気に入ったらまた作るから感想を聞かせてね。

あなたのことだから何でも美味しいって言いそうだけど・・・。

私は今日はちょっと秘密の買出しに行ってきます。

ゲットできたら今度プレゼントするね。

では、お仕事頑張って。NGいっぱい出して、OFFをつぶさないように。

           愛をこめて    揺」



「秘密の買出しってなんだろ・・」

彼はそうつぶやくとお弁当箱に入ったキムパプを大きな口に放り込んだ。


               



その夜。

「ごめん。今日も遅くなりそう。揺が作ってくれた夕食も食べられそうにないや・・(T_T)」

彼のアパートで夕食を作り、帰りを待っていた揺にメールが届いた。

「毎度毎度作って待ってるのも重荷かもな・・・」

揺はテーブルの上の料理にラップを掛けながらつぶやいた。

どうするのが彼のためなのか・・・・。

考えれば考えるほどわからなくなった揺は、先日トメたちからもらったたくさんの小銭の入ったビニール袋を取り出した。

おもむろにテーブル中に1セント硬貨やそのほかの硬貨をばら撒いておはじきをはじめる。

「あたまがぐちゃぐちゃになったときは単純な遊びに限る」

その作業を3順繰り返してもまだ彼は帰ってこなかった。

ワインの力も手伝って、彼女はいつの間にかダイニングテーブルで眠ってしまった。

「イタッ・・・・何?」

眠っていた揺が薄目をあけると目の前にビョンホンが座っていた。

テーブルの上に広げられた硬貨を揺の顔めがけてはじいている。

「こんなところで寝てると風邪引くぞ」

そういった彼の一撃は揺の鼻に当たった。

「普通・・・優しくキスとかして起こしてくれるんじゃない」

揺は鼻をさすりながら身体を起こした。

「普通が良かった?」

彼が不満そうに答えた。

「ううん。そんなあなたがいいけど」

揺は大きなあくびをしながらそういうとにっこりと笑った。

時計は2時を回っている。

「あ・・・お帰りなさい。今帰ってきたの?」

「ああ・・ちょっと前にね。お前の寝顔があんまり可愛かったからしばらく眺めてた。
今日は撮影が長引いちゃってね。
・・・・もう泊まっていけよ。何にもしないから」

冗談を言いつつも彼の顔には疲れの色がにじみ出ている。

「うん。ありがと。じゃあ、今日は泊めてもらう」

揺はそう答えるとにっこりと笑って、目の前の1セント硬貨を彼に向かって指ではじいた。


小さなベッドの中で二人は枕を並べて天井を見つめている。

彼は彼女の髪を撫でながらつぶやいた。

「揺・・・ごめんな・・せっかく食事作ってくれても食ってる時間がない」

「それはいいけど・・きちんと何かしら食べてる?」

「ああ・・作ってくれた弁当は残さないでちゃんと食べてるよ」

「夕飯は?」

「まあ、適当にね」

「適当ね・・心配だな・・」

「大丈夫だよ。それより揺をいつもひとりにしちゃって・・寂しくない?」

彼はそういうと揺の肩にそっと唇で触れる。

「全然。一人は慣れてるし。一人は嫌いじゃないもの」

つんとした表情でそう言う揺の鼻を彼はつまんで

「可愛くないな」と言って苦笑いをした。

「・・・・・寂しくないけど・・・・・何だか物足りないんだよね。
何だかいつも忘れ物してるみたいな感じっていうか・・・。
何を見ても何を食べてもあなたに見せてあげたいし、
食べさせてあげたいって思う。
一緒に見て一緒に食べたいって思う・・・」

「訂正。やっぱり最高に可愛い」

にっこりと笑って彼は揺にゆっくりとキスをした。

そしてそっと揺の髪を撫でる。

一日ハードな撮影を終えた彼は元気な様子を装っていたが、
やはり疲労の色は隠せない。

あっという間に手は動きを止め、彼は静かに寝息を立て始めた。

「おやすみなさい・・夢で会おうね」

揺はそうつぶやくと彼の頬にキスをしてにっこりと微笑んだ。


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